読書『万引き家族』是枝裕和著

今話題の映画『万引き家族』を観に行かないで、どうして是枝監督の書下ろし物語を読むの?

という疑問は当然あるだろう。
そう遠くまで行かなくても、それどころか二駅先のシネコンで上映していた。

前評判から出演者たちの素晴らしい演技、是枝監督の卓越した演出とカメラワークは観るに価する作品だということは分かっていた。

そんな映画を観るのが怖かった。
刺激が強すぎるだろう、感動し過ぎるだろうと十分予想できたので、とりあえず、映像なしの書下ろしを読もうと思ったわけだ。
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是枝裕和は監督としてだけでなく、文章による表現力もある。

キャッチコピーは「『犯罪』でしかつながれなかったー」だ。
『犯罪でしかつながれなかった』としても愛情溢れる擬似家族の物語、なんて甘っちょろい作品ではなかった。
それぞれが、子どもを除いて、欲、怠惰、恨みつらみを抱えながら集団を作っている。

もちろん、そのなかには温かい人間同士の触れ合いもあるのだけれど、何が善で何が悪なのか?渾然一体となって、弱いけれどしたたかな人たちが生きている。

薄汚れた生活のなかにときおり燦めく人間の崇高さ、そう、私たちが生きている日常と万引き家族の日常は「法に抵触するかどうか?」を除けば、同じようなものだ。

お涙頂戴の「万引きしなければ生きていけない他人同士が肩寄せあい、助け合って生きている」といった次元を超えた作品だからこそ、高い評価を得たのだろう。

これから、私はこの映画を観るだろうか?
「誰も知らない」も怖くて観れなかった。

しばらく時間をおいて、心身の調子が良いときに観ようと思っている。